サイエンスキャスティング2012

人工衛星の試験
準天頂衛星「みちびき」を身近に感じて
金属脆性について
温度を下げると電気抵抗はどうなる
宇宙ステーションに届ける
コンピューティングパワーが拓く未来の可能性

調査テーマ

  • 人工衛星の試験

    宇宙航空研究開発機構

    人工衛星や宇宙ステーションなどの宇宙機は、打上げのとき、ロケットが発生する大きな音や激しい振動を受けます。また、ロケットから切り離されるときには大きな衝撃を受けます。
    さらに、宇宙空間は超高真空・極低温で、地球上よりもずっと強い太陽光にさらされます。そのため、太陽が当たる面と当たっていない面の温度差は200度以上にもなってしまいます。
    宇宙機は、地上では起こり得ない厳しい環境に耐え、正常に作動しなくてはなりません。そこで、あらかじめそれらの環境を模擬した様々な試験を行います。
    本講義では、宇宙機が受ける厳しい環境と、地上で行う試験の重要性について講義しました。また、実際の試験が行われる設備を見学し、宇宙開発の現場に触れました。

    人工衛星の試験
    宇宙空間の超高真空・極低温と強い太陽光を模擬する「スペースチャンバー」
  • 宇宙ステーションに届ける ~こうのとりプロジェクト~

    宇宙航空研究開発機構

    宇宙ステーション補給機「こうのとり」は、種子島宇宙センターから国際宇宙ステーション(ISS)に実験装置や宇宙飛行士の生活を支える物資を届ける宇宙船です。2009年9月に初号機が、昨年1月には2号機が打ち上げられ、それぞれ無事ミッションを完了しました。2012年、星出彰彦宇宙飛行士がISS長期滞在中の7月21日には、3号機の打ち上げが予定されています
    アメリカのスペースシャトルが引退した今、「こうのとり」は大型の実験装置をISSに届けることができる唯一の宇宙船として、各国の期待を集めています。
    本講義では、「こうのとり」の概要とプロジェクトの内容について紹介しました。講義を通じて、「こうのとり」の飛行方法、国際宇宙ステーションにおける役割、有人宇宙機として備えるべき事項及び将来の発展性、さらに宇宙機の開発手法についての理解を深めました。

    宇宙ステーションに届ける
  • 準天頂衛星「みちびき」を身近に感じて

    宇宙航空研究開発機構

    カーナビがGPSなどの測位衛星からの信号を利用して位置を求めていることを知っていますか?準天頂衛星初号機「みちびき」も測位衛星のひとつで、日本のほぼ真上(準天頂)を通る軌道を周回することにより日本の天頂付近に長時間とどまることができます。これにより、GPSだけでは測位が難しかったビル街や山間部などの見通しの悪い場所でも位置を知ることができるようになるのです。「みちびき」独自の信号を利用したcm級測位の実現に向けた研究や、位置を知るというだけでなく防災・観光情報の提供、降水量予測や農機自動走行など、幅広い分野での利用に向けた研究が進められています。
    本講義では「みちびき」の概要と応用研究について紹介しました。また、実際に受信機を用いて「みちびき」からの信号を受信し、「軌跡で地図上に絵を描く」実習を通して衛星による測位を体験していただきました。

    準天頂衛星「みちびき」を身近に感じて
  • 水生生物を用いた化学物質の環境影響評価

    国立環境研究所

    私たちの身の回りには多くの化学物質があり、私たちはそれらの恩恵を受けながら生活しています。化粧品や洗剤や薬や殺虫剤などが挙げられます。しかしその一方で、それら化学物質は最終的に環境中に放出され、環境に負荷をかけているものもあります。化学物質を単純に危険視するのではなく、その性質を知ったうえで安全に、そして環境に負荷がないように使うことが大切です。
    それではそれら化学物質の環境影響についてはどのように調べればよいのでしょうか。
    小型水生甲殻類の1種であるミジンコは、化学物質を管理する法律(化審法や化管法、農取法など)で、新たに作られる化学物質や農薬・医薬品の環境安全性試験にも用いられています。今回はその試験に使われているミジンコを用いて、身近な化学物質についての簡単な影響試験と観察を行いました。実習後にはきっとミジンコが愛おしくなるでしょう。

    身近な化学物質の毒性を調べる
    身近な化学物質の毒性を調べる
  • MRIで脳を測る

    国立環境研究所

    ヒトの脳には1,000億の神経細胞とこれらが連携するための100兆ものシナプスが存在すると言われ、これらは遺伝子の制御を超えていると考えられています。脳の形成には環境要因が大きな影響をもつと考えられる一つの理由です。
    私たちは世界でも有数の機能を持つMRI装置(図1)を用いてヒト脳の画像計測と解析を行っています(図2)。集積したデータに基づいて現代の日本人の脳を定量し、データベース化する研究を進めています。このような研究には、超伝導磁石、高周波技術、分析化学、生物物理化学など、様々な専門領域を鳩合する必要があります。参加していただく皆さんには装置の概要、画像化原理、ヒト脳の構造と解析など、研究の一端に触れていただければと考えました。

    .MRIで水1Hスピン情報を可視化する
    図1
    MRIで水1Hスピン情報を可視化する
    図2
  • 遺伝子組換え技術で光るカイコをつくる

    農業生物資源研究所

    カイコは約5000年前からヒトが絹(シルク)を取るために利用してきました。家畜化が進み、幼虫はとてもおとなしく、成虫は飛べません。数年前にゲノムが解読され、チョウの仲間の代表として様々な遺伝子の役割が調べられるとともに、遺伝子組換え技術を活用して、カイコに医薬品の原料となるタンパク質を作らせたり、光るシルクやクモ糸シルクが開発されるなど、カイコは今とても注目されています。
    ここでは、ノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)等を利用した世界初の光るカイコの最先端研究を紹介し、実習を行いました。遺伝子組換えカイコの作り方や利用法を学んだ後、カイコの卵にDNA等を顕微注射したり、光るカイコを蛍光顕微鏡で観察しました。さらに希望者はカイコを解剖して、体のどこが光っているかを観察しました。その後、蛍光タンパク質とシルクをさせることによって作り出した蛍光シルクを用いて、試作した洋服等の貴重な実物を見学しました。有名デザイナーの桂由美氏と共同製作したウェディングドレスは必見です。

    遺伝子組換え技術で光るカイコをつくる
  • ネムリユスリ力の驚異的な乾燥耐性から学ぶ

    農業生物資源研究所

    水は生命活動に不可欠な分子で、実際人間の身体の約7割は水で、そのうちの1割を失うだけで危篤状態に陥ります。細胞レベルでは意外と乾燥に強いのですが、それでも50%以上脱水すると致死します。一方で地球上には身体の水分をほぼ完全に失っても死なない生き物たちが存在します。この無代謝の乾燥休眠はクリプトビオシスと呼ばれクマムシやカブトエビなどがよく知られた例でしょう。
    農業生物資源研究所ではクリプトビオシスする生物では最も高等で大型のネムリユスリカというアフリカ原産の昆虫を使って彼らの驚異的な乾燥耐性の分子機構について研究を進めています。将来的にこれらの成果は細胞や組織の「常温保存法」の開発に貢献するものと期待されます。また、乾燥した幼虫は極限温度、真空、放射線などに対しても高い耐性を持つことから国際宇宙ステーションでの実験材料にも用いられています。講演ではネムリユスリカ乾燥幼虫を水に戻して蘇生する様子を実際観察してもらいながら、「カラカラに乾いても死なない仕組み」や「ネムリユスリカを使った産業利用」について紹介しました。

    ネムリユスリ力の驚異的な乾燥耐性から学ぶ
    ネムリユスリ力の驚異的な乾燥耐性から学ぶ
  • 金属脆性について

    物質・材料研究機構

    私たちの身の回りで使用されている金属材料(例えば、鉄(Fe)やタングステン(W)、モリブデン(Mo))には、ある温度以下でもろくなる「低温脆性」という性質があります。タイタニック号の事故もこれが原因の一つと考えられています。試験片に衝撃荷重を加えて材料の粘り強さを調べる実験(シャルピー衝撃試験)を通して、金属の低温脆性について研究しました。

    金属脆性について
  • 金属の不思議

    物質・材料研究機構

    金属の「相変態」って知っていますか?それは金属原子の並び方が変わることなのですが、なぜそれが重要かというと、この「相変態」によって金属の特徴ががらりと変わってしまうからなんです。身の回りにたくさんある金属、その見た目は同じように見えても、実は中身は結構すごいんです。
    この研究では、金属の力学特性と磁性に注目します。加熱・冷却・加工などの実験を通して、それらの金属の性質がどのようにかわるのかを調べてみました。そして、実際に原子の並び方が変わっていく様子を計算機シミュレーションで見てみました。図は四角だった並び方(線の左側)が、菱形(線の右側)の並び方に変わっていく様子です。

    金属の不思議
  • 温度を下げると電気抵抗はどうなる

    物質・材料研究機構

    金属や半導体等の電気抵抗は、温度を下げるとどのように変化するでしょうか。実際に測定して試してみました。そして、低温で電気抵抗がゼロになる超伝導体も測ってみました。
    通常の研究では、こういったデータは高価な液体ヘリウムと高価な装置を用いて行います。しかし、ここでは、なるべく簡易な装置と学校のクラブでも手に入れることが可能な液体窒素を使って手作業の測定を体験してみました。4端子法による電気抵抗測定法や、電気抵抗と熱伝導率の関係などを学びました。

    温度を下げると電気抵抗はどうなる
  • 光触媒を用いた人工光合成反応

    産業技術総合研究所

    人類が持続可能な社会を構築し発展を続けるためには、再生可能エネルギーの有効利用が不可欠です。再生可能エネルギーの中でも太陽エネルギーは最も膨大です。しかし、その有効利用技術は太陽電池、太陽熱、バイオマス程度であり、非常に限定されています。第四の選択肢として、植物の光合成と同じように光子を直接化学エネルギーに変換する人工光合成技術があります。人工光合成技術は、半導体や色素など光吸収励起する物質で構成される光触媒や光電極(光触媒を導電性基板に成膜した電極)を用いてエネルギー蓄積型反応を直接進行させる技術です。
    光合成の中で光エネルギーを変換するしくみには光化学系IとIIがあります。高校の生物の教科書の光合成の単元でヒル反応(葉から取り出した葉緑体懸濁液に鉄3価イオンを入れると鉄イオンが2価に還元されながら酸素が発生する反応)を習いますが、これもエネルギー蓄積型の反応の一種です。実習ではこれと同じ反応を葉緑体ではなく、酸化物半導体粉末の光触媒で進行させました。これは重要な人工光合成反応の一つです。光エネルギーは2価鉄イオンとして蓄積されていますが、そのままでは二次利用し難いので、光化学系Iを模倣した別な光触媒反応や低電圧電解反応と組み合わせて水素を製造できます。研究現場では様々な光触媒反応や光電極反応の設備を見学しました。

    光触媒を用いた人工光合成反応
  • 超高温超高圧発生装置を用いた新物質探索

    産業技術総合研究所

    当グループでは、超伝導材料研究の一環として六方型キュービックアンビルを用いた超高温超高圧発生装置による新規材料開発を行っております。
    この装置の多くは地球科学等の研究分野で利用されておりますが、当グループではこれをエレクトロニクス分野の材料開発に応用しております。
    超伝導の実用化は、産業面では既に医療用MRI等に用いられており、半導体材料と同様、現代の基盤技術を支えております。しかしながら現在のところ、超伝導現象が生じる温度まで冷却しなければならないことから、冷媒が必要不可欠となることから、応用範囲は極めて限定的となり、理想的には室温でも作動する高温超伝導体の開発が望まれています。
    なお当グループにおける対象材料は、主に液体窒素温度を超える超伝導転移温度(Tc)を持つ銅酸化物系や、それに次ぐ高いTcをとる鉄系超伝導体を中心に研究することにより、従来の金属系超伝導体の超伝導発現機構とは異なると考えられている発現機構の解明をするとともに新規超伝導体の開発へと繋げるというどちらといえばやや基礎的な研究を行っております。
    当日は、この装置を用いて試料合成を行い、得られた試料をX線回折装置による評価し、物性特性評価として例えば、磁化測定による温度依存性の測定を行いました。

    超高温超高圧発生装置を用いた新物質探索
    超高温超高圧発生装置の試料合成部分
  • 微生物を分けてレーザーで撃て!

    産業技術総合研究所

    地球上のあらゆる環境に微生物は存在していると考えられていますが、どのような種類の微生物が存在するのかは、まだよくわかっていません。私たちは、環境中に生息する微生物を簡単に分析する技術の開発を進めています。
    多くの微生物の細胞の表面は、マイナスに帯電しています。私たちは、このことに着目して、マイクロサイズのガラス毛細管(キャピラリー)に微生物が入った液をいれて高電圧をかけて、帯電の程度の違いで微生物を生きたまま短時間で種類ごとに分ける方法を開発しました。さらに、微生物細胞に特殊な薬品を加えてレーザー光を瞬間的にあてると、細胞の中に含まれる数多くのタンパク質を一斉に分析することができます。私たちは、タンパク質の分子構造の微妙な違いに着目して、微生物の種類を調べる方法も開発しました。実習では、こうした最新の分析装置を使って、乳酸菌の分析を体験してみました。

    微生物を分けてレーザーで撃て
  • コンピューティングパワーが拓く未来の可能性

    インテル株式会社

    半導体テクノロジーの進化に伴い、社会は劇的に変化してまいりました。21世紀のICT社会は、これまで以上に変化が加速する時代とも言われています。テクノロジーが今後私たちの生活をどのように変えて行くのか、その答えはまさに未来を担う若い世代の皆さんのイマジネーションと創造力に委ねられています。
    今回のプログラムでは、インテル®ヒューマン・インタラクティブ・テクノロジー・アプリケーション・センターで先端的なデモやコンセプトに触れていただくとともに、「ムーアの法則」を始めとする、半導体テクノロジーとコンピューティングパワーの進化の歴史等をご紹介させていただきました。
    その上で、これからの時代を生きて行く皆さんならではの感性で、テクノロジーとプロダクトやサービスが結びついて生み出される新しいユーザーエクスペリエンス、さらには社会のイノベーションの可能性について考えていただきました。

    コンピューティングパワーが拓く未来の可能性
    コンピューティングパワーが拓く未来の可能性
    コンピューティングパワーが拓く未来の可能性
    コンピューティングパワーが拓く未来の可能性

サイエンスキャスティング2012開催概要

開催日時

2012年8月16日(木)11時~17日(金)16時30分

研究内容の調査

宇宙航空研究開発機構、国立環境研究所、農業生物資源研究所、物質・材料研究機構、産業技術総合研究所、インテル株式会社で特定分野に従事する研究者を訪問し、研究内容を調査しました。通常のサイエンスツアーでは公開されていない研究内容を見ることができました。
参加者は、研究者の講義、実験、質問、写真撮影等により、研究内容を調査し記録しました。

グループでの討議とプレゼンテーション資料の作成

つくば国際会議場にて、班のメンバーと必要な討議を行い、一定の時間内に調査した内容を7分間程度で説明できるようなプレゼンテーション資料にまとめました。
他の研究テーマを訪問した仲間に、自分が訪問した研究テーマをわかりやすく説明することも、みなさんの重要なミッションの一つです。

プレゼンテーション

研究所を訪問し調査した内容を、7分間でプレゼンテーションしました。他の調査テーマを訪問した班にわかりやすく説明することを心がけました。
また、他の班の調査テーマを聞き、質問をし、今回は訪問できなかった調査テーマへの理解も深めました。

エポカルトークサロン(夕食会)

研究所の先生方と直接お話ができる夕食会です。時間がなくて聞けなかったことや、興味はあるけれども、今回は訪問できなかった研究所の先生方に、どんどん質問をしました。
※夕食までの自由時間には高校生が自分たちで制作したプラネタリウムを投影いたしました。