サイエンスキャスティング2017

スマホを使った昆虫調査
オリジナルコントローラを作って触って楽しむ
.MRIで水1Hスピン情報を可視化する
ヒトを理解して社会をデザインする応用認知心理学研究
国際宇宙ステーションについて学ぼう
花火を作って、仕組みを調べよう

調査テーマ

  • 未知の光の正体を探れ!電子回路基板を使った光の検出器の製作

    高エネルギー加速器研究機構

    ブレッドボードと呼ばれるはんだ付け不要の電子回路基板と半導体センサーを組み合わせて、光の検出器を作成します。そして、各自で作成した分光器を使って、身の回りにある様々な光を分光測定して、その光が何色から構成されているかを調べました。
    実はこの一連の過程は、規模は違いますが高エネルギー加速器研究機構の研究者が行っている研究の進め方とほぼ同じです。実際に自分で見たり、聞いたり、触れたりすることで、研究者の日常を体験してみました。

    未知の光の正体を探れ!電子回路基板を使った光の検出器の製作
  • スマホを使った昆虫調査

    農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター

    絶滅が心配される生物や急速に広まる外来生物の分布状況を知るためには、いろいろな場所に行って調査をする必要がありますが、個人の研究者ではとても調べきれません。そこで、農業環境変動研究センターでは、専門知識を持たない人でも、楽しみながら参加できる「生物情報取集システム」を開発しました。
    携帯電話やスマートフォンのカメラ機能を使って生き物の写真を撮影し、メールでシステムに送信すると、その生き物を撮影した場所がインターネット上の地図に記録されます。多くの人が参加することで、いつ、どこで、どんな生き物が見られたのかの情報をたくさん集めることができるというしくみです。
    この講座では、このシステムを開発した研究者に話を聞くとともに、実際にシステムを使って昆虫調査を体験してもらいました。(使用するスマートフォンまたはタブレットは、主催者が準備しました)

    スマホを使った昆虫調査
    「生物情報取集システム」のしくみ
    スマホを使った昆虫調査
    農業環境変動研究センターの敷地内には、農村環境に生息する昆虫が多くみられます。
  • 身近な化学物質の毒性を調べる

    国立環境研究所

    食品、医薬品、化粧品、衣料品など私たちの身の回りにはさまざまな化学物質があふれていて、それらの恩恵にあずかっています。しかし、それらを使った後、どうなるか考えてみたことはありますか?人間に悪影響を与える化学物質もありますが、人間には影響がなくても、使った後には環境中に出ていって、そこに棲んでいる魚や昆虫に害を与える化学物質も存在します。たとえば人間と昆虫とでは体の仕組みが違うので、違う性質の化学物質が作用するというわけです。しかし化学物質を単純に危険視するのではなく、その性質を知った上で安全に、そして環境に負荷がないように使うことが大切です。
    日本では化学物質の環境安全性を調べる試験法の一つにミジンコやメダカという小さな生き物が用いられています。今回はそれらを使った簡単な実験と観察を通して、化学物質の安全性について考えてみました。

    身近な化学物質の毒性を調べる
  • MRIで水¹Hスピン情報を可視化する

    国立環境研究所

    化学物質などの環境因子のヒト脳への影響評価を目指して4.7Tという高磁場の磁気共鳴装置(Magnetic Resonance Imager(MRI)(図1)を用いた研究を進めています。
    この装置では磁気共鳴現象を利用し生体内の組織水1Hスピンを測定します。この測定のため、超伝導磁石、送受信のための高周波機器、コンピューターなど様々な装置、測定法、解析法などを利用し、ヒト脳形態画像(水1Hスピン情報の可視化、図2)、代謝物情報(代謝物1Hスピン情報の可視化)などの測定ができます。この課題では、上記の環境研究の概要、水1Hスピン情報を可視化するMRIの原理、装置の紹介などを行いました。
    そして、これまでに取得してきたヒト脳データから、右脳と左脳をつなぐ役割を持つ脳梁の抽出解析演習を行いました。参加される方は、MRIや脳梁について調べてきて頂けると理解が深まると思いました。

    .MRIで水1Hスピン情報を可視化する
    図1
    MRIで水1Hスピン情報を可視化する
    図2
  • 国際宇宙ステーションについて学ぼう!

    有人宇宙システム株式会社

    地上から約400km上空に建設された有人施設、国際宇宙ステーション(ISS)。日本はその一部となる「きぼう」日本実験棟を開発し、つくばで運用を行っています。現在「きぼう」では、色々な分野の宇宙実験が行われており、その準備や実施には様々な人が関わっています。本講義では、それらの様々な立場で宇宙実験を支えている人達の仕事を紹介し、理解を深めました。その後、宇宙航空研究開発機構の筑波宇宙センターの施設を見学しました。

    国際宇宙ステーションについて学ぼう
  • 遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査する

    農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門

    カイコは約5000年前からヒトが絹(シルク)を取るために利用してきました。家畜化が進み、幼虫はとてもおとなしく、成虫は飛べません。既にゲノムが解読され、チョウの仲間として様々な遺伝子の役割が調べられるとともに、遺伝子組換え技術を活用して、医薬品の原料となるタンパク質を作らせたり、光るシルクやクモ糸シルクが開発されており、また2014年、富岡製糸場等が世界遺産に登録され、カイコは改めて注目されています。
    ここでは、ノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)等を利用した世界初の光るカイコの最先端研究を紹介し、実習を行いました。遺伝子組換えカイコの作り方や利用法を学んだ後、卵にDNA等を顕微注射したり、GFPタンパク質を抽出しました。さらに希望者はカイコを解剖して、体のどこが光っているかを観察しました。また、蛍光タンパク質とシルクを融合させた光るシルクを用いて試作した洋服等の貴重な実物を見学しました。

    遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査
    遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査
  • オリジナルコントローラを作って触って楽しむ!~触った感触をデジタルで再現!世界最先端「3次元ハプティクステクノロジー」~

    株式会社ミライセンス/産業技術総合研究所

    最近話題沸騰中のバーチャルリアリティ(VR)技術。VR眼鏡をつければ、自分の周りに、実物と見まがうほどのリアルな仮想世界が広がります。しかし、そこには、大きな欠点があるのを知っていますか?そう、目には見えているのに、自分の手では決して触ることができないのです。VRの仮想世界で、かわいい動物が出現、その動物に触ろうとしてもするっと手がすりぬけてしまい、実際にさわったり、なでたりする感覚は、自分の手には伝わってきません。
    ミライセンスはこの欠点を解決するため世界初・最先端の「3次元ハプティクス・フォースリアクター」デバイスを開発しました。そのデバイスを手に持ては、そのデバイスから発生する特殊な振動で、手の神経を刺激することにより、脳内に特別な「錯覚」を発生。ざらざらといった触った感覚や、ひっぱる/押されるといった浮遊感を仮想的に感じることができます。まさに、「触覚のバーチャルリアリティ」。もう数年で、VRをはじめ、スマートフォン、電気自動車、ロボットなどに搭載されていく予定です。
    本講座では、小型のハプティクス・フォースリアクターを使用して、実際に、VRやゲームに使用できる「コントローラ」を制作体験しました。どんなハプティクス効果が出るかは、皆さんの工夫次第。作って、触って、楽しみました。本講座では、さまざまなタイプのハプティクス・フォースリアクターを実際に体験することができました。ゲームコントローラタイプ、平面なのに立体を感じる不思議なパネルタイプ、小型指先装着タイプなどなど。ミライセンスが研究開発している最新技術を、発明者の「N博士」が解説。どうしてそんな世紀の発明できたかもこっそり教えました。みんなで、未来を語りました。

    オリジナルコントローラを作って触って楽しむ
    デジタルで錯覚を引き起こす、脳科学と工学の融合
  • ヒトを理解して社会をデザインする応用認知心理学研究

    産業技術総合研究所

    同じものを見ても、注意力や記憶力、経験や知識によって、一人一人に見えている世界は違っています。でも、私たちは普段、「自分が見たものは正しい」「自分に見えているものは、相手にも同じように見えている」と思ってしまいがちです。私たちの研究室では、ヒトの見え方や理解の仕方を調査して、モノやサービスを利用する人に合わせてデザインする研究をしています。
    参加する皆さんには、研究室で開発した時短デザイン実験システムや眼球運動計測できるバーチャルリアリティシステムなどを使って、実際に自分の注意や記憶の容量や視覚特性を計測する認知行動計測実験を通して、脳と心に見える世界を科学的に調べて、デザインに応用する研究を体験してもらいました。

    ヒトを理解して社会をデザインする応用認知心理学研究
  • 花火を作って、仕組みを調べよう!

    産業技術総合研究所

    花火には化学の基礎がぎっしりと詰まっています。物はなぜ燃えるか?炎色反応はなぜきれいな色がでるか?実際に花火を安全な方法で作り、周期律表・電子配置・原子と分子などの知識を元に、量子科学の扉を開いてみました。また、産総研で行っている花火の安全研究についても紹介しました。
    特に炎色反応の原理については調べる方法が少なく、良い解説がありません。花火を使うと簡単に2000°Cを超える高温が得られるため、炎色反応の秘密を探る良い手段です。右の図はストロンチウムを入れた紅色花火の発光スペクトルです。多くの紅色光を出していることがわかります。どうしてそうなるか?それを考えて頂きました。
    また、天気が良ければ、爆薬が爆発する様子を水中で安全に体感するという貴重な体験をして頂きました。

    花火を作って、仕組みを調べよう

サイエンスキャスティング2017開催概要

開催日時

2017年8月2日(水)11時 ~ 3日(木)16時30分

研究内容の調査

高エネルギー加速器研究機構、農業・食品産業技術総合研究機構(農業環境変動研究センター、生物機能利用研究部門)、国立環境研究所、有人宇宙システム株式会社、株式会社ミライセンス、産業技術総合研究所で特定分野に従事する研究者を訪問し、研究内容を調査しました。通常のサイエンスツアーでは公開されていない研究内容を見ることができました。
参加者は、研究者の講義、実験、質問、写真撮影等により、研究内容を調査し記録しました。

グループでの討議とプレゼンテーション資料の作成

つくば国際会議場にて、班のメンバーと必要な討議を行い、一定の時間内に調査した内容を7分間程度で説明できるようなプレゼンテーション資料にまとめました。
他の研究テーマを訪問した仲間に、自分が訪問した研究テーマをわかりやすく説明することも、みなさんの重要なミッションの一つです。

プレゼンテーション

研究所を訪問し調査した内容を、7分間でプレゼンテーションしました。他の調査テーマを訪問した班にわかりやすく説明することを心がけました。
また、他の班の調査テーマを聞き、質問をし、今回は訪問できなかった調査テーマへの理解も深めました。

エポカルトークサロン(夕食会)

研究所の先生方と直接お話ができる夕食会です。時間がなくて聞けなかったことや、興味はあるけれども、今回は訪問できなかった研究所の先生方に、どんどん質問をしました。
※夕食までの自由時間には高校生が自分たちで制作したプラネタリウムを投影いたしました。