サイエンスキャスティング2019
調査テーマ
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未知の光の正体を探れ!電子回路基板を使った光の検出器の製作
高エネルギー加速器研究機構
ブレッドボードと呼ばれるはんだ付け不要の電子回路基板と半導体センサーを組み合わせて、光の検出器を作成します。そして、各自で作成した分光器を使って、身の回りにある様々な光を分光測定して、その光が何色から構成されているかを調べました。
実はこの一連の過程は、規模は違いますが高エネルギー加速器研究機構の研究者が行っている研究の進め方とほぼ同じです。実際に自分で見たり、聞いたり、触れたりすることで、研究者の日常を体験してみました。 -
花火を作って、仕組みを調べよう!
産業技術総合研究所
花火には化学の基礎がぎっしりと詰まっています。物はなぜ燃えるか?炎色反応はなぜきれいな色がでるか?実際に花火を安全な方法で作り、周期律表・電子配置・原子と分子などの知識を元に、量子科学の扉を開いてみました。また、産総研で行っている花火の安全研究についても紹介しました。
特に炎色反応の原理については調べる方法が少なく、良い解説がありません。花火を使うと簡単に2000°Cを超える高温が得られるため、炎色反応の秘密を探る良い手段です。右の図はストロンチウムを入れた紅色花火の発光スペクトルです。多くの紅色光を出していることがわかります。どうしてそうなるか?それを考えて頂きました。
また、天気が良ければ、爆薬が爆発する様子を水中で安全に体感するという貴重な体験をして頂きました。 -
超高温超高圧発生装置を用いた新物質探索
産業技術総合研究所
当グループでは、超伝導材料研究の一環として六方型キュービックアンビルを用いた超高温超高圧発生装置による新規材料開発を行っております。
この装置の多くは地球科学等の研究分野で利用されておりますが、当グループではこれをエレクトロニクス分野の材料開発に応用しております。
超伝導の実用化は、産業面では既に医療用MRI等に用いられており、半導体材料と同様、現代の基盤技術を支えております。しかしながら現在のところ、超伝導現象が生じる温度まで冷却しなければならないことから、冷媒が必要不可欠となることから、応用範囲は極めて限定的となり、理想的には室温でも作動する高温超伝導体の開発が望まれています。
なお当グループにおける対象材料は、主に液体窒素温度を超える超伝導転移温度(Tc)を持つ銅酸化物系や、それに次ぐ高いTcをとる鉄系超伝導体を中心に研究することにより、従来の金属系超伝導体の超伝導発現機構とは異なると考えられている発現機構の解明をするとともに新規超伝導体の開発へと繋げるというどちらといえばやや基礎的な研究を行っております。
当日は、この装置を用いて試料合成を行い、得られた試料をX線回折装置による評価し、物性特性評価として例えば、磁化測定による温度依存性の測定を行いました。 -
ヒトの能力を支援し拡張する認知インタラクションデザイン研究
産業技術総合研究所
コンピュータの中に現実のようで現実ではない仮想環境を作る仮想現実(VR)技術や、現実と仮想現実を組み合わせる拡張現実(AR)技術の研究が進んでいます。
近い未来、VRやARの中で勉強や仕事をしたり、人と会ったりすることが当たり前になってきます。
私たちの研究室では、理解や学習や対話が効率的で楽しくなるような、VRやARの世界のデザインを開発したり、その効果を科学的に検証する方法を開発しています。
人が使いやすいデザインやそれを評価する方法を開発するためには、ヒトの見え方や理解の仕方を研究する必要があるので、様々なVRやARのコンテンツに対する人の認知や行動を調べる「VR実験心理学研究」を行っています。
VR環境での実験は、現実の世界で、なかなか実際に起きにくい出来事や危険で現実に計測できない場面での人の能力の支援や拡張にも利用できます。
参加する皆さんには、VR実験心理学的研究を通して、人の認知インタラクションを科学的に調べ、それを人の理解や行動を支援したり拡張するデザインに応用する研究を体験してもらいました。 -
身近な化学物質の毒性を調べる
国立環境研究所
食品、医薬品、化粧品、衣料品など私たちの身の回りにはさまざまな化学物質があふれていて、それらの恩恵にあずかっています。しかし、それらを使った後、どうなるか考えてみたことはありますか?人間に悪影響を与える化学物質もありますが、人間には影響がなくても、使った後には環境中に出ていって、そこに棲んでいる魚や昆虫に害を与える化学物質も存在します。たとえば人間と昆虫とでは体の仕組みが違うので、違う性質の化学物質が作用するというわけです。しかし化学物質を単純に危険視するのではなく、その性質を知った上で安全に、そして環境に負荷がないように使うことが大切です。
日本では化学物質の環境安全性を調べる試験法の一つにミジンコやメダカという小さな生き物が用いられています。今回はそれらを使った簡単な実験と観察を通して、化学物質の安全性について考えてみました。 -
水田の生き物調査 ~生き物の多い田んぼはどんな環境?~
農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター
水田はお米を作る場所ですが、鳥やカエル、昆虫、植物など様々な生き物にとって大切な棲みかにもなっています。生物多様性の危機が叫ばれる今日、生き物の棲みかとしての水田の役割が改めて注目され始めています。
ところで、皆さんの周りの水田はどうでしょう?一見しただけでは水田の生物多様性は分かりません。普段は静かに見えても、実は多くの生き物が棲む、にぎやかな場所なのかも。では、どうしたら水田の生物多様性を評価することができるのでしょう?
本講座では、科学的根拠に基づいた水田の生物多様性判定方法を紹介し、実際に研究センターの敷地内にある水田で、どのような生き物が棲んでいるのか、また利用の仕方(農法など管理のやり方)によって生き物の数や種類にどのくらい違いがあるのかを調査してみました。 -
遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査する
農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門
カイコは約5000年前からヒトが絹(シルク)を取るために利用してきました。家畜化が進み、幼虫はとてもおとなしく、成虫は飛べません。既にゲノムが解読され、チョウの仲間として様々な遺伝子の役割が調べられるとともに、遺伝子組換え技術を活用して、医薬品の原料となるタンパク質を作らせたり、光るシルクやクモ糸シルクが開発されており、また2014年、富岡製糸場等が世界遺産に登録され、カイコは改めて注目されています。
ここでは、ノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)等を利用した世界初の光るカイコの最先端研究を紹介し、実習を行いました。遺伝子組換えカイコの作り方や利用法を学んだ後、卵にDNA等を顕微注射したり、GFPタンパク質を抽出しました。さらに希望者はカイコを解剖して、体のどこが光っているかを観察しました。また、蛍光タンパク質とシルクを融合させた光るシルクを用いて試作した洋服等の貴重な実物を見学しました。 -
地図から読み取れる災害情報
国土地理院
日本では東日本大震災以降数多くの大きな自然災害が各地を襲い、人々の生活に甚大な影響を及ぼしています。
これらの大規模な災害を完全に防ぐことは難しいですが、我々の生活への影響を小さくすることは可能です。
その際、地図から地形によるハザードの種類等を把握し、その危険性を読み取るとともに過去に発生した災害の伝承碑や古地図といった災害履歴情報を把握することが大切です。これらの災害リスクに関する理解を地図から学びます。以下のような体験学習を実施しました。
「地理院地図」にアクセスして、日本各地にある典型的な地形を紹介し、そこにある空中写真、地形図や土地条件図などの様々な地図を比較したり、地理院地図で地形断面図や色別標高図等を作成したりして地形の特徴を理解しました。
また、地図の情報から3Dプリンターを使用して作製した3D模型を観察しました。これらの体験から自分の身を守るすべを学んでいただきました。
サイエンスキャスティング2019開催概要
開催日時
2019年8月1日(木)11時~2日(金)16時30分
研究内容の調査
高エネルギー加速器研究機構、農業・食品産業技術総合研究機構(農業環境変動研究センター、生物機能利用研究部門)、国立環境研究所、国土地理院、産業技術総合研究所で特定分野に従事する研究者を訪問し、研究内容を調査しました。通常のサイエンスツアーでは公開されていない研究内容を見ることができました。
参加者は、研究者の講義、実験、質問、写真撮影等により、研究内容を調査し記録しました。
グループでの討議とプレゼンテーション資料の作成
つくば国際会議場にて、班のメンバーと必要な討議を行い、一定の時間内に調査した内容を7分間程度で説明できるようなプレゼンテーション資料にまとめました。
他の研究テーマを訪問した仲間に、自分が訪問した研究テーマをわかりやすく説明することも、みなさんの重要なミッションの一つです。
プレゼンテーション
研究所を訪問し調査した内容を、7分間でプレゼンテーションしました。他の調査テーマを訪問した班にわかりやすく説明することを心がけました。
また、他の班の調査テーマを聞き、質問をし、今回は訪問できなかった調査テーマへの理解も深めました。
エポカルトークサロン(夕食会)
研究所の先生方と直接お話ができる夕食会です。時間がなくて聞けなかったことや、興味はあるけれども、今回は訪問できなかった研究所の先生方に、どんどん質問をしました。
※夕食までの自由時間には高校生が自分たちで制作したプラネタリウムを投影いたしました。