サイエンスキャスティング2015
調査テーマ
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さあ、健康的な宇宙生活をはじめよう!
有人宇宙システム株式会社
高度400km上空、国際宇宙ステーション(ISS)では、今日も宇宙飛行士が様々な実験を行ったり、機材の点検・修理を行ったりしながら生活しています。宇宙での生活は、気を配ることがたくさん。トイレやお風呂、食事の話を聞いたこともあるかと思いますが、『健康』についてはどうでしょう?これまでに多くの日本人宇宙飛行士が、数か月もの間国際宇宙ステーションで生活してきましたが、この間、宇宙飛行士が健康的に過ごしてきた裏では、宇宙飛行士自身の努力と周りの多くの人達の支えがありました。
本講義では、宇宙飛行士の健康を管理するということについて、講義を中心に紹介し、理解を深めていただきました。また、JAXA筑波宇宙センターにある国際宇宙ステーションの閉鎖環境を模擬した設備で宇宙飛行士の模擬訓練も体験していただきました。宇宙に興味のある方には、新しい視点を増やし、宇宙に興味のない方にも、これを機に興味を持っていただければうれしいです。
宇宙飛行士の模擬訓練は、(株)エイ・イー・エスが提供する宇宙飛行士模擬訓練・体験に参加しました。
※このテーマの参加費は13,000円、定員6名様までとさせていただきました。 -
鳥の目で地表の時空間を旅しよう
国土地理院
飛行機から撮影した2枚の航空写真をコンピュータ(解析図化機)にセットして特殊なめがねをつけてディスプレイを見ると、鳥になって空から地上を眺めおろすように地表が浮き上がってきます。地上で地形を測らなくても、解析図化機が細かい地形の凸凹を詳しく計測してくれます。計測した地形を3D表示しながら、地表の凸凹がどうしてできたのか考えてみましょう。すると、長い時間をかけて地表に働いてきた大きな力が見えてきます。
このテーマでは、解析図化機を操作して航空写真から地表の地形を計測する体験をしていただくとともに、地形を観察して地形をつくる力を考察し、災害や私たちの生活との関わりを考えました。 -
匂いを利用した植物や昆虫のコミュニケーション
農業環境技術研究所
私たち人間は、おもに言葉によりコミュニケーションをとりますが、言葉を持たない植物や昆虫のコミュニケーションでは、匂いが大切な働きをしています。例えば、多くの昆虫は、フェロモンと呼ばれる特別な匂いを使って仲間を集めたり、外敵から身を守ったりしています。また、植物は、匂いを利用して花粉を運ぶ虫を集め、害虫を排除する天敵までも呼び寄せます。匂いの情報がないと、全く繁殖できない生物も少なくありません。これを上手に操ることができれば、農作物に被害を与える害虫や雑草を防ぐこともできます。しかも、これらの匂い物質は、残留して生態系に悪影響を与える心配がないので、環境にやさしい農業資材となり得ます。
この講座では、植物や昆虫が出す匂いに、昆虫がどのように反応するかを観察してみました。そして、匂いを集めたり分析したりする実験設備を見学して、研究方法を学びました。参加者は、生物の匂いの役割と秘密に迫る体験ができました。 -
身近な化学物質の毒性を調べる
国立環境研究所
食品、医薬品、化粧品、衣料品など私たちの身の回りにはさまざまな化学物質があふれていて、それらの恩恵にあずかっています。しかし、それらを使った後、どうなるか考えてみたことはありますか?人間に悪影響を与える化学物質もありますが、人間には影響がなくても、使った後には環境中に出ていって、そこに棲んでいる魚や昆虫に害を与える化学物質も存在します。たとえば人間と昆虫とでは体の仕組みが違うので、違う性質の化学物質が作用するというわけです。しかし化学物質を単純に危険視するのではなく、その性質を知った上で安全に、そして環境に負荷がないように使うことが大切です。
日本では化学物質の環境安全性を調べる試験法の一つにミジンコやメダカという小さな生き物が用いられています。今回はそれらを使った簡単な実験と観察を通して、化学物質の安全性について考えてみました。 -
MRIで脳を測る
国立環境研究所
ヒトの脳には1,000億の神経細胞とこれらが連携するための100兆ものシナプスが存在すると言われ、これらは遺伝子の制御を超えていると考えられています。脳の形成には環境要因が大きな影響をもつと考えられる一つの理由です。
私たちは世界でも有数の機能を持つMRI装置(図1)を用いてヒト脳の画像計測と解析を行っています(図2)。集積したデータに基づいて現代の日本人の脳を定量し、データベース化する研究を進めています。このような研究には、超伝導磁石、高周波技術、分析化学、生物物理化学など、様々な専門領域を鳩合する必要があります。参加していただく皆さんには装置の概要、画像化原理、ヒト脳の構造と解析など、研究の一端に触れていただければと考えました。 -
遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査する
農業生物資源研究所
カイコは約5000年前からヒトが絹(シルク)を取るために利用してきました。家畜化が進み、幼虫はとてもおとなしく、成虫は飛べません。既にゲノムが解読され、チョウの仲間として様々な遺伝子の役割が調べられるとともに、遺伝子組換え技術を活用して、医薬品の原料となるタンパク質を作らせたり、光るシルクやクモ糸シルクが開発されており、また2014年、富岡製糸場等が世界遺産に登録され、カイコは改めて注目されています。
ここでは、ノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)等を利用した世界初の光るカイコの最先端研究を紹介し、実習を行いました。遺伝子組換えカイコの作り方や利用法を学んだ後、卵にDNA等を顕微注射したり、GFPタンパク質を抽出しました。さらに希望者はカイコを解剖して、体のどこが光っているかを観察しました。また、蛍光タンパク質とシルクを融合させた光るシルクを用いて試作した洋服等の貴重な実物を見学しました。 -
ネムリユスリ力の驚異的な乾燥耐性から学ぶ
農業生物資源研究所
2014年5月に国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在された若田宇宙飛行士が無事任務を終えられて地球に帰還されました。日本の実験棟「きぼう」で若田宇宙飛行士が実施した宇宙実験の一つが「乾燥ネムリユスリカが微重力下で蘇生するかどうか?」というものでした。結果は、ほとんどすべての乾燥幼虫が水戻し3時間後には活動を再開し、さらにその2週間後には、蛹や成虫に変態した個体も確認できました。今後も、ネムリユスリカを使った様々な宇宙実験がISSで実施されることになるでしょう。
本ワークショップでは、ネムリユスリカ幼虫がカラカラに干涸びても、なぜ死なないのか、そして乾燥した幼虫は極限環境に暴露されても、なぜ平気なのか、彼らの驚異的なストレス耐性の仕組みについて紹介しました。また、乾燥ネムリユスリカ幼虫を実際に使った蘇生実験や、巨大唾線染色体の観察も実施しました。 -
環境微生物の新たな分析技術
産業技術総合研究所
微生物は、水の中や土壌あるいは私たちの体の中や食品中にも存在しています。微生物には、病気の原因になったり、毒を作ったりするような、人間にとって有害となるものがいる一方で、発酵食品を作ったり、汚水を浄化してくれるような役に立つ微生物もいます。しかし、どのような種類の微生物が存在するのかは、まだよくわかっていません。私たちは、環境中に生息する微生物を簡単に分析する技術の開発を進めています。
微生物はあまりに小さいので、電子顕微鏡をつかって観察しますが、それでも見た目だけで種類を決めることは容易ではありません。そこで、遺伝子の並び方を調べて種類を決めます。さらに、微生物細胞に特殊な薬品を加えてレーザー光を瞬間的にあてると、細胞の中に含まれる数多くのタンパク質を一斉に分析することができます。私たちは、タンパク質の分子構造の微妙な違いに着目して、微生物の種類を調べる方法も開発しました。実習では、こうした最新の分析装置を使って、微生物の分析を体験しました。 -
原子核スピンの奏でる音と230次元空間の冒険
産業技術総合研究所
現実の世界とほとんど相互作用をしない原子核スピン量。それを音として取り出して「化学を観る」方法が核磁気共鳴スペクトルです。私たちは、その核磁気共鳴(NMR)装置を使って、混合物を精製すること無く測定し、知識を発見する技術の開発と普及を行っています。
核磁気共鳴装置は、絶対零度近くに冷やされた超電導マグネット、波形を作り発射し受ける電磁波送受信機とアナログ-デジタル変換器、電算機による数学処理を行う大変に複雑な装置です。ところがその装置を使って混合物を直接解析すると、化学を見ているのに「生き物の営み」が誰でも簡単に見えて来ます。これをメタボリック・プロファイリング法と名付け、幾つものメカニズムをまるで玉ねぎの皮を剥くように紐解いていく研究開発の支援技術として応用を図っています。
このプロファイリングで、230次元空間という、にわかには想像できない空間を飛び回り、知識を発見していく様子を感じて頂けたらと思いました。 -
花火を通して考える光と量子科学の世界
産業技術総合研究所
花火には化学の基礎がぎっしりと詰まっています。物はなぜ燃えるか?炎色反応はなぜきれいな色がでるか?高校で学ぶ周期律表・電子配置・原子と分子などの知識を元に、量子科学の扉を開いてみました。また、産総研で行っている花火の安全研究についても紹介しました。
特に炎色反応の原理については調べる方法が少なく、良い解説がありません。花火を使うと簡単に2000°Cを超える高温が得られるため、炎色反応の秘密を探る良い手段です。右の図はストロンチウムを入れた紅色花火の発光スペクトルです。多くの紅色光を出していることがわかります。どうしてそうなるか?それを考えて頂きました。 -
光を分ける〜物質の構造と運動〜
高エネルギー加速器研究機構
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、フォトンファクトリーという放射光科学研究施設(PF)と東海J-PARCにある物質・生命科学実験施設(MLF)において、X線・中性子・ミュオンを使って物質を調べています。このうちX線と中性子は「波の反射」を利用しています。私たちの身近にある物質は原子からできていますが、X線(光)や中性子が物質にあたると、物質内の原子の配置(構造)や運動状態に応じて、特定の方向に反射が起こります。これらを使って、どのように物質の構造や原子の運動を調べるのでしょうか。簡単な分光器を作ってその仕組みを考えてみました。
サイエンスキャスティング2015開催概要
開催日時
2015年8月7日(金)11時~8日(土)16時30分
研究内容の調査
有人宇宙システム株式会社、国土地理院、農業環境技術研究所、国立環境研究所、農業生物資源研究所、産業技術総合研究所、高エネルギー加速器研究機構で特定分野に従事する研究者を訪問し、研究内容を調査しましょう。通常のサイエンスツアーでは公開されていない研究内容を見ることができました。
参加者は、研究者の講義、実験、質問、写真撮影等により、研究内容を調査し記録しました。
グループでの討議とプレゼンテーション資料の作成
つくば国際会議場にて、班のメンバーと必要な討議を行い、一定の時間内に調査した内容を7分間程度で説明できるようなプレゼンテーション資料にまとめました。
他の研究テーマを訪問した仲間に、自分が訪問した研究テーマをわかりやすく説明することも、みなさんの重要なミッションの一つです。
プレゼンテーション
研究所を訪問し調査した内容を、7分間でプレゼンテーションしました。他の調査テーマを訪問した班にわかりやすく説明することを心がけました。
また、他の班の調査テーマを聞き、質問をし、今回は訪問できなかった調査テーマへの理解も深めました。
エポカルトークサロン(夕食会)
研究所の先生方と直接お話が出来る夕食会です。時間がなくて聞けなかったことや、興味はあるけれども、今回は訪問出来なかった研究所の先生方に、どんどん質問をしました。
※夕食までの自由時間には高校生が自分たちで制作したプラネタリウムを投影いたしました。