サイエンスキャスティング2023
調査テーマ
-
花火を作って、仕組みを調べよう!
産業技術総合研究所
花火には化学の基礎がぎっしりと詰まっています。物はなぜ燃えるか?炎色反応はなぜきれいな色がでるか?実際に花火を安全な方法で作り、周期律表・電子配置・原子と分子などの知識を元に、量子科学の扉を開いてみました。
特に炎色反応の原理については調べる方法が少なく、良い解説がありません。花火を使うと簡単に 2000°Cを超える高温が得られるため、炎色反応の秘密を探る良い手段です。右の図はストロンチウムを入れた紅色花火の発光スペクトルです。多くの紅色光を出していることがわかります。どうしてそうなるか?それを考えました。
また、爆薬が爆発する様子を水中で安全に体感するという貴重な体験をしました。 -
超高温超高圧発生装置を用いた新物質探索
産業技術総合研究所
当研究グループでは、超伝導材料研究の一環として六方型キュービックアンビルを用いた超高温超高圧発生装置による新規材料開発を行っております。この装置の多くは地球科学等の研究分野で利用されておりますが、これをエレクトロニクス分野の材料開発に応用しております。
超伝導の実用化は、産業面では既に医療用MRI等に用いられており、半導体材料と同様、現代の基盤技術を支えております。しかしながら現在のところ、超伝導現象が生じる温度まで冷却しなければならない為、冷媒が必要不可欠となることから、応用範囲は極めて限定的となり、理想的には室温でも作動する高温超伝導体の開発が望まれています。
なお当グループにおける対象材料は、主に液体窒素温度を超える超伝導転移温度(Tc)を持つ銅酸化物系や、それに次ぐ高いTcをとる鉄系超伝導体を中心に研究することにより、従来の金属系超伝導体の超伝導発現機構とは異なると考えられている発現機構の解明をするとともに新規超伝導体の開発へと繋げるというどちらかといえばやや基礎的な研究を行っております。
当日は、この装置を用いて試料合成を行い、得られた試料をX線回折装置によって評価し、物性特性評価として例えば、磁化測定による温度依存性の測定を行いました。 -
宇宙から見た地球:電子の眼リモートセンシング
産業技術総合研究所
産業技術総合研究所の地質調査総合センターでは、人工衛星に載せるセンサーの開発や、実際の衛星から送られてくるデータの解析、処理、校正などの技術開発を進めています。現地に行かずに広く情報を収集するのが宇宙からのリモートセンシングですが、気球、航空機、そして現在ではドローンや人工衛星を利用して地球を見るようになってきています。
さて人工衛星やセンサーにはそれぞれの目的があって、それに応じたデータを最適に収集する必要があります。皆さんが良くご承知なのは、地球上の位置を知るために利用している”GPS”(衛星測位システム)ですね。米国衛星によるGPSに加えて、現在では純国産の「みちびき」の利用も始まっています。これらは衛星から地球上の位置という情報を調べるという意味ではリモートセンシングといえますが、純粋なリモートセンシングとしては、ものを測るという意味で、宇宙に地球が放っているいろいろなエネルギーを測定してデータにする事が使命になります。
衛星のセンサーが見える情報としての光(電磁波)などに最適なセンサーを組み合わせて、衛星から地上にデータを送って処理することで、やっと本来の目的に使える我々が手にしやすい情報に再構築することができます。例えば、山や河といった地形や、岩石分布、地表にある人工物や森林などの判別、地面温度や大気中の酸素二酸化炭素濃度、地表にある特定の元素の探索や地下浅いところにある地盤の構造、そしてそれらを繰り返し測定することによって得られる時間変化などは、我々の言葉で言うと「環境、地質、資源、防災・・」などに置き換えられます。
この探求テーマでは、最初に衛星リモートセンシングの概要についてまず知り、実際の衛星データを使った地球や月などの現実課題での最新研究を紹介していただきました。その後で、ラボから実際のデータの処理の過程を見て、最後に参加者それぞれに実データを解析ソフトを使った課題研究をしました。データやソフトは産総研が提供し、操作なども研究者がサポートしていただき、最先端の衛星リモートセンシングの現場に触れました。 -
未来のデザイナーを体験しよう!心理学とVRで”伝わるデザイン”を科学する
産業技術総合研究所
- 人はどう自分や他者や情報を理解しているのか、認知心理学の最先端科学を難しくないように紹介
- 心理学を応用した伝わりやすいデザインについて紹介
- 最先端のVRを使ったデザイナー体験(プログラムができなくても大丈夫!)
狙いとしては、人間やデザイン、心理学に興味のある生徒さんが一番合っています。最先端VRを体験や、VRの工学技術の習得は、この研修の中心ではありません。
-
家畜化から遺伝子組換えまで、カイコで歴史を感じよう
農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
カイコは約5000年前からヒトが絹(シルク)を取るために利用してきました。家畜化が極端に進んだ結果、人間の手助けなしには生きていくことも命をつなぐことも出来ない生物となっています。ゲノムの解読や遺伝子組換え技術の確立により、実験材料としての存在感も増していますが、産業動物としても医薬品の原料となるタンパク質の生産や光るシルクや超極細シルクの開発が行われています。
また2014年、富岡製糸場等が世界遺産に登録されて以来、カイコをめぐる歴史は改めて注目を集めています。ここでは、ノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)等を利用した世界初の光るカイコの最先端研究を紹介し、実習を行います。カイコの歴史や遺伝子組換えカイコの作り方と利用法を学んだ後、卵にDNA等を顕微注射したり、GFPを抽出します。さらに希望者はカイコを解剖して、体内で光る蛍光を観察します。
また、蛍光タンパク質とシルクを融合させた光るシルクを用いて試作した洋服等の貴重な実物を見学しました。 -
身近な化学物質は生き物にとって安全?
国立環境研究所
食品、医薬品、化粧品、衣料品など私たちの身の回りにはさまざまな化学物質があふれていて、それらの恩恵にあずかっています。しかし、それらを使った後、どうなるか考えてみたことはありますか?使った後に環境中に出て行った化学物質は、そこに棲んでいる魚や昆虫に害を与えるかもしれません。人間に対して安全な化学物質でも、たとえば人間と昆虫とでは体の仕組みが違うので、昆虫に対しては害があるかもしれないのです。しかし化学物質のすべてを単純に危険視するのではなく、その性質を知ったうえで安全に、そして環境に負荷がないように使うことが大切です。
日本では化学物質の環境安全性を調べる試験法の一つにミジンコやメダカという小さな生き物が用いられています。今回はそれらを使った簡単な実験と観察を通して、皆さんの身近にある化学物質の安全性について考えてみました。 -
地震・津波観測データを駆使した最先端の災害軽減研究
防災科学技術研究所
2011年3月に発生した東日本大震災では、地震と津波の防災に関するさまざまな課題が浮き彫りとなりました。巨大地震やそれによる津波に適切に備えるには、正確な観測データを迅速に入手し、その上で最大限に活用していくことが重要です。
当研究所では「陸海統合地震津波火山観測網:MOWLAS」を全国に配置しています。そこから得られるデータとシミュレーションをどのように駆使し、 地震動や津波の即時予測や地震発生の長期評価を高度化しているか、各種実験装置も含めて紹介しました。 -
宇宙から視るだいちの動き
国土地理院
日本を囲むプレートの動きや地震・火山活動等が原因で、我が国では絶えず大地が変形し続けています。地殻変動と呼ばれるこうした変形は、明治以降、長い間、地上での測量を通して把握されてきましたが、現在は、主に人工衛星による宇宙からの観測で正確に捉えることができます。地殻変動は、地震や噴火の発生原因を調べる貴重な手掛かりとなったり、日本の位置を正確に把握・管理するために必要不可欠な情報です。本講義では、宇宙から捉えた地殻変動を、以下のような学習を通して学んでいきます。
現在、地殻変動観測で活躍する、GNSS(GPSが代表例)や合成開口レーダー(SAR)の仕組みを理解し、これら観測で得られたデータから変動を読み解く技術を学びました。さらに、「地理院地図」にアクセスして、過去の地震や火山活動で発生した地殻変動や現在日本で進行する微小な地殻変動を探す等して、日本のだいちの動きを学びました。 -
現代地学の3基軸:「資源エネルギー」「環境」「防災」を模擬する精密実験装置の入り口
東京理科大学
地球と宇宙の時間と空間の全てを対象とする地学では、調べようとする現象と同じサイズ(何千キロとか)とスピード(何万年かけてとか)で実験を行うことができないことが普通です。そのため、サイズやスピードを現実的な大きさに置き換えて、自然現象を模擬した実験を行うことが有効なアプローチになります。このセッションでは、火山噴火を例にとり、<高温のマグマが冷却固化しつつ減圧発泡する過程>の一部に肉薄する模擬実験装置を作ります(温度は室温です)。噴火に関わるさまざまな条件を振ることにより、現象がどのように変化するか調べてみました。
実際には、ジェットポンプによる発泡スチロール球噴出装置の組み立てと運転実験です。装置は、仕様を振った何種類かを用意し、爆発性の違いをもたらす理由や火道内対流の成立条件の探索などを行います。参加者が少なければ、各人に異なる仕様の装置を担当してもらい、それを皆で総合検討して、「模擬実験装置による実験を通じた火山噴火現象の理解」といった成果につなげたいと考えます。
東京理科大学野田キャンパスは距離があるので、つくば国際会議場に実験装置を持ち込んで探求活動をしてました。 -
温泉って何?お風呂を科学し、オリジナル入浴剤を作ろう!
株式会社バスクリンつくば研究所・産業技術総合研究所
旅行先で非日常感を与え、癒してくれる温泉。皆さんは温泉とは何なのか考えたことはありますか?
温泉は地殻変動で地層中に閉じ込められた海水や地中に浸透した降水が、地球内部からの熱に熱せられ、周囲の岩石成分を含みながら湧出したものです。多様な成分を含む温泉は治療や保養のために効果を発揮しますが、温泉を毎日利用できるのは一部の方に限られています。そこで、安心して気軽に毎日温泉を体感できる入浴剤の開発が進められています。
今回サイエンスキャスティングで紹介するバスクリンのつくば研究室では、温泉の成分や効果についての科学を学び、オリジナルの入浴剤作りを通して入浴剤開発の一端を体験しました。あなたも温泉を追究する温泉研究者や、心地よい入浴の提供に日々邁進する入浴剤開発者の息吹を感じました。 -
電磁波の伝達速度を測ってみよう
高エネルギー加速器研究機構
現代の情報化社会において必要不可欠な信号の伝達。信号を伝達するには、ラジオやテレビでおなじみの振動する電磁波(光)が用いられます。電磁波が同軸ケーブルの中をどのように伝達するか実際に伝達速度を測定してみました。また、様々な同軸ケーブルを取り上げ、信号伝達の違いを測定し、電磁波の速度、屈折率を計算してみました。
サイエンスキャスティング2023開催概要
開催日時
2023年8月8日(火)11時~9日(水)16時30分
研究内容の調査
高エネルギー加速器研究機構、農業・食品産業技術総合研究機構(生物機能利用研究部門)、国立環境研究所、防災科学研究所、国土地理院、産業技術総合研究所、東京理科大学で特定分野に従事する研究者を訪問し、研究内容を調査しました。通常のサイエンスツアーでは公開されていない研究内容を見ることができました。参加者は、研究者の講義、実験、質問、写真撮影等により、研究内容を調査し記録しました。
グループでの討議とプレゼンテーション資料の作成
つくば国際会議場にて、班のメンバーと必要な討議を行い、一定の時間内に調査した内容を7分間程度で説明できるようなプレゼンテーション資料にまとめました。
他の研究テーマを訪問した仲間に、自分が訪問した研究テーマをわかりやすく説明することも、みなさんの重要なミッションの一つです。
プレゼンテーション
研究所を訪問し調査した内容を、7分間でプレゼンテーションしました。他の調査テーマを訪問した班にわかりやすく説明することを心がけました。
また、他の班の調査テーマを聞き、質問をし、今回は訪問できなかった調査テーマへの理解も深めました。
エポカルトークサロン(夕食会)
研究所の先生方と直接お話ができる夕食会です。時間がなくて聞けなかったことや、興味はあるけれども、今回は訪問できなかった研究所の先生方に、どんどん質問をしました。