サイエンスキャスティング2018

身近な化学物質の毒性を調べる
デジタルで錯覚を引き起こす、脳科学と工学の融合
周辺環境で比較する昆虫調査
遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査
花火を作って、仕組みを調べよう
地図から地形を知る

調査テーマ

  • 未知の光の正体を探れ!電子回路基板を使った光の検出器の製作

    高エネルギー加速器研究機構

    ブレッドボードと呼ばれるはんだ付け不要の電子回路基板と半導体センサーを組み合わせて、光の検出器を作成します。そして、各自で作成した分光器を使って、身の回りにある様々な光を分光測定して、その光が何色から構成されているかを調べました。
    実はこの一連の過程は、規模は違いますが高エネルギー加速器研究機構の研究者が行っている研究の進め方とほぼ同じです。実際に自分で見たり、聞いたり、触れたりすることで、研究者の日常を体験してみました。

    未知の光の正体を探れ!電子回路基板を使った光の検出器の製作
  • 最先端のハプティクステクノロジーで、体感できる仮想世界を作ろう!~デジタルで錯覚を引き起こす、脳科学と工学の融合~

    株式会社ミライセンス/産業技術総合研究所

    世界を席巻しているバーチャルリアリティー(VR)。現実と見間違えるほどリアルな仮想世界が生まれています。しかし、その世界のモノを触ることができないという重大な欠点があります。
    そこでミライセンスは、触れないVRの世界を「体感できる」世界に昇華させるため、錯覚を応用し、触ったことをデジタルで表現する脳科学ベースの次世代工学技術DigitalHaptics®を開発。 ミライセンスのデバイスが、人工知能とディープラーニングによって最適化された、特殊な振動をすることで、ざらざらといった触った感覚、ひっぱる/押されるといった浮遊感を、世界で初めて、錯覚で表現できるようになりました。 もう数年で、VRやスマートフォン、電気自動車などに搭載される予定です。
    本講座では、世界最先端のモーションキャプチャ技術とDigitalHaptics®で「体感できる」仮想世界を作りました。普段触ることができない、研究所の中でも最先端の技術・設備で、どんな新しい仮想世界を作れるかは、工夫次第。次世代のデジタルワールドにダイブしましょう。

    デジタルで錯覚を引き起こす、脳科学と工学の融合
    デジタルで錯覚を引き起こす、脳科学と工学の融合
  • 身近な化学物質の毒性を調べる

    国立環境研究所

    食品、医薬品、化粧品、衣料品など私たちの身の回りにはさまざまな化学物質があふれていて、それらの恩恵にあずかっています。しかし、それらを使った後、どうなるか考えてみたことはありますか?人間に悪影響を与える化学物質もありますが、人間には影響がなくても、使った後には環境中に出ていって、そこに棲んでいる魚や昆虫に害を与える化学物質も存在します。たとえば人間と昆虫とでは体の仕組みが違うので、違う性質の化学物質が作用するというわけです。しかし化学物質を単純に危険視するのではなく、その性質を知った上で安全に、そして環境に負荷がないように使うことが大切です。
    日本では化学物質の環境安全性を調べる試験法の一つにミジンコやメダカという小さな生き物が用いられています。今回はそれらを使った簡単な実験と観察を通して、化学物質の安全性について考えてみました。

    身近な化学物質の毒性を調べる
  • 昆虫はどんなところに棲んでいる?周辺環境で比較する昆虫調査

    農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター

    昆虫は、世界の動物のおよそ70%を占めると言われ、これまでにわかっているだけでも100万種以上が確認されています。生き物の中でも最も繁栄しているグループの一つと言える昆虫は、あらゆる環境に適応し、多様な環境に様々な種類が棲み分けています。また昆虫は、生活様式も多様で、花粉を運ぶことで植物の受粉を助けたり、作物を食べる害虫を食べたりと、多くの種類の昆虫がいることが農業にとっても重要であることが分かってきています。では、どのような昆虫がどのような環境に棲んでいるのでしょうか?
    この講座では、昆虫の専門的な識別法の基礎を学ぶとともに、農業環境変動研究センターの敷地内の農村環境において、水田や畑、里山などの周辺の環境によって生息する昆虫に違いがあるのかを実際に調査し比較しました。
    農業環境変動研究センターの敷地内には、農村環境に生息する昆虫が多くみられます。周辺の環境によって、出現する昆虫の種類に違いがあるのか実際に調査しました。

    周辺環境で比較する昆虫調査
  • 遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査する

    農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門

    カイコは約5000年前からヒトが絹(シルク)を取るために利用してきました。家畜化が進み、幼虫はとてもおとなしく、成虫は飛べません。既にゲノムが解読され、チョウの仲間として様々な遺伝子の役割が調べられるとともに、遺伝子組換え技術を活用して、医薬品の原料となるタンパク質を作らせたり、光るシルクやクモ糸シルクが開発されており、また2014年、富岡製糸場等が世界遺産に登録され、カイコは改めて注目されています。
    ここでは、ノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)等を利用した世界初の光るカイコの最先端研究を紹介し、実習を行いました。遺伝子組換えカイコの作り方や利用法を学んだ後、卵にDNA等を顕微注射したり、GFPタンパク質を抽出しました。さらに希望者はカイコを解剖して、体のどこが光っているかを観察しました。また、蛍光タンパク質とシルクを融合させた光るシルクを用いて試作した洋服等の貴重な実物を見学しました。

    遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査
    遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査 遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査
  • 花火を作って、仕組みを調べよう!

    産業技術総合研究所

    花火には化学の基礎がぎっしりと詰まっています。物はなぜ燃えるか?炎色反応はなぜきれいな色がでるか?実際に花火を安全な方法で作り、周期律表・電子配置・原子と分子などの知識を元に、量子科学の扉を開いてみました。また、産総研で行っている花火の安全研究についても紹介しました。
    特に炎色反応の原理については調べる方法が少なく、良い解説がありません。花火を使うと簡単に2000°Cを超える高温が得られるため、炎色反応の秘密を探る良い手段です。右の図はストロンチウムを入れた紅色花火の発光スペクトルです。多くの紅色光を出していることがわかります。どうしてそうなるか?それを考えて頂きました。
    また、天気が良ければ、爆薬が爆発する様子を水中で安全に体感するという貴重な体験をして頂きました。

    花火を作って、仕組みを調べよう
  • 超高温超高圧発生装置を用いた新物質探索

    産業技術総合研究所

    当グループでは、超伝導材料研究の一環として六方型キュービックアンビルを用いた超高温超高圧発生装置による新規材料開発を行っております。
    この装置の多くは地球科学等の研究分野で利用されておりますが、当グループではこれをエレクトロニクス分野の材料開発に応用しております。
    超伝導の実用化は、産業面では既に医療用MRI等に用いられており、半導体材料と同様、現代の基盤技術を支えております。しかしながら現在のところ、超伝導現象が生じる温度まで冷却しなければならないことから、冷媒が必要不可欠となることから、応用範囲は極めて限定的となり、理想的には室温でも作動する高温超伝導体の開発が望まれています。
    なお当グループにおける対象材料は、主に液体窒素温度を超える超伝導転移温度(Tc)を持つ銅酸化物系や、それに次ぐ高いTcをとる鉄系超伝導体を中心に研究することにより、従来の金属系超伝導体の超伝導発現機構とは異なると考えられている発現機構の解明をするとともに新規超伝導体の開発へと繋げるというどちらといえばやや基礎的な研究を行っております。
    当日は、この装置を用いて試料合成を行い、得られた試料をX線回折装置による評価し、物性特性評価として例えば、磁化測定による温度依存性の測定を行いました。

    超高温超高圧発生装置を用いた新物質探索
    超高温超高圧発生装置の試料合成部分
  • 地図から地形を知る

    国土地理院

    地形は、災害や私たちの生活との関わりが深く大切な情報です。地図を使えば地域を俯瞰でき地形を知ることができます。地図から地形を読み取るための様々なポイントを学びました。具体的には、以下のような体験学習を実施しました。
    いつでもだれでもが利用可能な国土地理院のWeb地図「地理院地図」にアクセスして、日本各地の場所の地形を地形図や土地条件図などの様々な地図を 比較したり、地形断面図や色別標高図等を作成したりして地形の特徴を理解しました。
    また、地図の情報から3Dプリンターを使用して3D地図(立体的な地形モデル)を作製しました。地図が3Dになると地形の理解がどのように変わるかも体験してもらいました。

    地図から地形を知る
    地図から地形を知る

サイエンスキャスティング2018開催概要

開催日時

2018年8月3日(金)11時 ~ 4日(土)16時30分

研究内容の調査

高エネルギー加速器研究機構、農業・食品産業技術総合研究機構(農業環境変動研究センター、生物機能利用研究部門)、国立環境研究所、国土地理院、株式会社ミライセンス、産業技術総合研究所で特定分野に従事する研究者を訪問し、研究内容を調査しました。通常のサイエンスツアーでは公開されていない研究内容を見ることができました。
参加者は、研究者の講義、実験、質問、写真撮影等により、研究内容を調査し記録しました。

グループでの討議とプレゼンテーション資料の作成

つくば国際会議場にて、班のメンバーと必要な討議を行い、一定の時間内に調査した内容を7分間程度で説明できるようなプレゼンテーション資料にまとめました。
他の研究テーマを訪問した仲間に、自分が訪問した研究テーマをわかりやすく説明することも、みなさんの重要なミッションの一つです。

プレゼンテーション

研究所を訪問し調査した内容を、7分間でプレゼンテーションしました。他の調査テーマを訪問した班にわかりやすく説明することを心がけました。
また、他の班の調査テーマを聞き、質問をし、今回は訪問できなかった調査テーマへの理解も深めました。

エポカルトークサロン(夕食会)

研究所の先生方と直接お話ができる夕食会です。時間がなくて聞けなかったことや、興味はあるけれども、今回は訪問できなかった研究所の先生方に、どんどん質問をしました。
※夕食までの自由時間には高校生が自分たちで制作したプラネタリウムを投影いたしました。